就職や転職の際に「試用期間あり」と書かれている求人を目にすることがあります。
この試用期間とは、会社と労働者の双方が「本採用にふさわしいか」を見極めるために設けられる期間です。
しかし、試用期間だからといって労働者の権利が制限されるわけではありません。
この記事では、試用期間の基本的な労働条件、法律上の取り扱い、実務で注意すべきポイントをわかりやすく解説します。

試用期間とは?
- 入社直後の一定期間を「お試し」として働く制度
- 会社は労働者の適性や勤務態度を確認できる
- 労働者も職場環境や仕事内容を見極められる
👉 双方にとってミスマッチを防ぐための制度ですが、労基法上は「労働契約が成立している」点が重要です。
試用期間中の労働条件
試用期間中も労働契約は有効に成立しているため、以下の権利は通常通り適用されます。
- 労働時間・休憩・休日
労基法で定められた労働時間(1日8時間・週40時間)や休憩、休日のルールは適用されます。 - 賃金の支払い
「試用だから無給」や「極端に低い給与」は認められません。
ただし、就業規則に定めている場合は本採用より低い給与を設定することは可能です。 - 社会保険の適用
条件を満たす場合は、入社初日から社会保険に加入する必要があります。
試用期間の長さ
一般的には 3か月程度 が多いですが、法律で明確な上限はありません。
ただし、合理的な理由なく長期間(半年〜1年以上)続けるのは不適切とされます。
試用期間中の解雇
会社は「見極め期間」という性質を理由に解雇しやすいと誤解されていますが、実際はそうではありません。
- 試用期間中であっても解雇には「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要
- 解雇権濫用法理(労契法16条)は試用期間にも適用される
- 解雇する場合には原則として 30日前の予告または予告手当 が必要
👉 つまり「試用だから簡単に辞めさせられる」というのは誤解です。
試用期間終了後
- 問題がなければ正式に「本採用」となる
- 適性に疑問がある場合は「本採用拒否」もあり得る
- 本採用拒否は実質的に「解雇」と同じ扱いになるため、厳格な判断が求められる
実務での注意点
- 労働条件通知書や雇用契約書に「試用期間の有無」「期間」「給与条件」を明記することが必要
- 就業規則に定めがなければ、一方的な本採用拒否は無効とされる可能性あり
- 労働者側も、試用期間を「会社を見極めるチャンス」として捉えることが大切
まとめ
- 試用期間中も労働契約は有効であり、基本的な権利は守られる
- 賃金・労働時間・社会保険などは通常通り適用
- 解雇や本採用拒否には厳格な要件があり、安易には認められない
- 双方にとって「ミスマッチを防ぐための制度」として活用することが望ましい
👉 試用期間だからといって不安になる必要はありません。
むしろ自分に合った職場かどうかを確認できる重要な期間と考えましょう。
コメント