会社に勤めていると、毎年「定期健康診断を受けてください」と案内されることがあります。
これは単なる福利厚生ではなく、法律で義務付けられた仕組みです。
会社にも労働者にも責任があり、受けなかった場合には罰則やリスクが生じることもあります。
この記事では、健康診断の義務について、会社と労働者の両方の立場からわかりやすく解説します。

健康診断の義務とは?
健康診断は、労働安全衛生法に基づき、会社が労働者に対して実施しなければならないものです。
目的は、労働者の健康状態を把握し、病気の早期発見や労働災害の防止につなげることにあります。
👉 つまり「会社が勝手にやっているサービス」ではなく、法律上の義務です。
会社の義務
労働安全衛生法第66条では、会社に次のような健康診断の実施義務が課されています。
- 雇入時健康診断
新しく労働者を雇う際に必ず実施。 - 定期健康診断
常時使用する労働者に対して、年1回実施。 - 特定業務従事者の健康診断
深夜業や有害物質を扱う業務に従事する労働者に対して、6か月以内ごとに実施。 - 特殊健康診断
鉛・有機溶剤・石綿など特定の有害業務に従事する労働者に対して実施。
労働者の義務
健康診断は会社が実施する義務を負いますが、労働者側にも「受ける義務」があります。
- 健康診断の受診を拒否することはできない
- 正当な理由なく受診を拒否した場合、就業規則違反とみなされる可能性がある
- 受診結果は本人にも通知され、必要に応じて就業制限や配置転換の判断に活用される
👉 つまり「会社が勝手にやっていることだから関係ない」という考えは誤りです。
健康診断の費用
- 原則として会社が負担する
- 労働者が自己負担するケースは基本的に認められない
- ただし、本人が希望して追加検査を行う場合は自己負担になることもある
健康診断を怠った場合のリスク
会社が義務を怠った場合:
- 労働安全衛生法違反として50万円以下の罰金
- 労働者が健康を害した場合、損害賠償責任を負う可能性
労働者が受診しなかった場合:
- 体調悪化や労働災害のリスク
- 配置転換ができずにトラブルになる恐れ
実務での注意点
- 実施結果は労働者ごとに「健康診断個人票」として5年間保存する必要がある
- プライバシー保護の観点から、結果を管理職や同僚に漏らしてはいけない
- 再検査が必要な場合には、会社が労働者に受診を勧める努力義務を負う
まとめ
- 健康診断は労働安全衛生法で義務付けられている
- 会社は雇入時・定期・特定業務・特殊健康診断を実施する責任がある
- 労働者も受診する義務があり、拒否はできない
- 費用は原則会社負担
- 実施を怠ると会社に罰則、労働者に健康リスクが生じる
👉 健康診断は「面倒なもの」ではなく、労使双方を守る仕組みです。正しく理解して活用することが大切です。
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