「仕事中にケガをして休んだ場合、会社からの休業補償と労災保険はどう違うの?」
多くの労働者や事業主が疑問に感じるポイントです。労働基準法に定められた休業補償と、労災保険による休業補償給付は似ているようで異なり、両者の役割や対象範囲を理解することが大切です。
本記事では、労災と休業補償の関係を整理し、労働者が安心して働くために知っておくべき知識をわかりやすく解説します。

1. 労災保険とは?
労災保険(労働者災害補償保険)は、労働者が 業務上の災害 や 通勤途中の災害 に遭ったときに、治療費や休業中の生活費などを補償する制度です。
- 治療費(療養補償給付)は自己負担ゼロ
- 休業した場合には賃金の約80%が補償される
- 後遺障害や死亡時には障害補償給付や遺族補償給付も用意
つまり、労災保険は「仕事や通勤に起因するケガ・病気」に対応するセーフティーネットです。
2. 労働基準法上の休業補償とは?
一方、労働基準法には 休業補償 の規定があります。
これは、労働者が「使用者の責めに帰すべき事由によって働けない場合」に、会社が 平均賃金の60%以上 を支払うべきとするものです。
- 例:会社の都合で工場が一時停止、シフト削減で働けない場合
- 業務外の病気やケガで休んだ場合は対象外
- 会社都合による休業であることが条件
つまり、労働基準法の休業補償は「労働者の責任ではなく会社側の事情で働けない場合」に適用されます。
3. 労災による休業補償給付との違い
労災保険の 休業補償給付 と労働基準法の 休業補償 は、名前は似ていますが根拠法も対象も異なります。
項目 | 労災保険の休業補償給付 | 労働基準法の休業補償 |
---|---|---|
根拠法 | 労働者災害補償保険法 | 労働基準法第26条 |
対象 | 業務上災害・通勤災害 | 使用者の責めに帰すべき休業 |
金額 | 給付基礎日額の60%+特別支給金20%=賃金の約80% | 平均賃金の60%以上 |
費用負担 | 国(労災保険料は会社が全額負担) | 会社 |
申請先 | 労働基準監督署 | 会社 |
4. 両方の補償は重複するの?
労災と労働基準法の休業補償は、基本的には 重複して支給されることはありません。
例えば、業務中に事故で休業する場合は労災保険から休業補償給付が支給されるため、会社は労基法上の休業補償をする必要はありません。
逆に、会社都合の休業であれば労基法の休業補償が必要ですが、労災保険は使えません。
5. 実務でよくあるケース
- 工場の事故で骨折 → 労災保険の休業補償給付が支給
- 会社の経営悪化で休業 → 労基法上の休業補償を会社が支給
- 労災申請を会社が渋るケース → 労基署に直接申請可能
特に中小企業では「労災隠し」が問題になることもあり、労働者自身が制度を理解して声をあげることが大切です。
6. まとめ
- 労災保険の休業補償給付 は業務や通勤災害で休んだときに適用され、賃金の約8割が支給される
- 労基法の休業補償 は会社の都合で働けないときに適用され、賃金の6割以上を会社が負担する
- 両者は似ているが根拠法や対象が異なるため、状況に応じて使い分けが必要
- 実務では労災申請を拒まれることもあるため、労働者自身の知識が重要
👉 労災と休業補償を正しく理解することで、いざというときに安心して権利を行使できます。
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